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アリョーシャの写真が重いよ。

もう出て4年以上経つけど、今更ながら読んでみた。

「オーバーカム」byアレクセイ・ヤグディン

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…重かった。いや、内容じゃなく本が。全編写真集ばりのいい紙で、実際にヤグのポップスターみたいなスナップがたっぷりだから、1日で読み終わるボリュームにしてはずっしり重くて、電車で読むのにちと辛かった。これはいわゆる普通の翻訳本じゃなくて、もともと日本から企画を持って行って作ったものなのね。だから作りがアイドル本っぽいのか。田村明子さんって、本当にヤグが好きなんだ。

まず思ったのが、ヤグディンって本当に率直で、愛すべきキャラだなあということ。

周囲との軋轢や度重なる故障、ジェーニャとの激しい戦いと、本当に濃密で壮絶なスケート人生が描かれているんだけど、その語り口はあまりに飾り気がない。というか読んでいるほうがハラハラするほど正直だ。 ミーシン先生やロシア協会に抱いた疑念や確執を、そこまで赤裸々に話してもいいのか? うーん、いいのか。これってロシア人気質か、ヤグ気質なのか。

「エフゲニーはロシアのゴールデンボーイ、そして僕は異端児の黒い羊」みたいに悪ぶる姿はまるで、愛情に飢えて地団駄を踏む小さな男の子のようで、かわいらしく感じてしまう。そんな純粋さとパッションがすべて、ヤグの扇情的な演技に通じているんだろうな。読んでいてとても面白い、よくできた一冊だと思う。

ただソルトレイク五輪SPで、ミーシン先生がジェーニャを置いてキスクラから去ったという、明らかに事実と違う記述もあることだし、当然ながら真実ばかりが描かれている訳ではないだろう。それに立場が変われば、ものの見方も180°変わるはず。ジェーニャのバイオグラフィーで、そのあたりに触れたものってあるのかな。寡聞にして知らない。でも、結局ヤグに対して永遠にリベンジができなくなったジェーニャにとって、その頃のことを詳細に残すっていうのは、あまりに辛い作業かもしれない。というかもう、どうでもいいのかもしれないな。ヤグと違って、ジェーニャのキャラじゃない気もする。

いずれにせよ、まばゆいばかりの光を放ったヤグプル時代の第一の立役者は、ミーシン先生だということが、改めてよく分かった。罪作りな人だ。

ところでジェーニャを追いかけ始めた最近になって、ソルトレイク五輪前後に彼に対する北米マスコミの強烈なバッシングがあったことを知り、少しショックを受けた。同時多発テロ直後の、異様なナショナリズムの嵐が吹き荒れているところに、「プルシェンコ=ソビエトシステムが生み出したサイボーグ」 「ヤグディン=西側の新天地へ飛び出したフロンティアの象徴」みたいな図式ができていて、そこにミーシン先生が油を注いだ、と(笑)

19歳のジェーニャは、五輪で負けたのと同じくらい、そのことで傷ついていたと聞くと、7年も前のことなのに本当に切なくなる。

でも。そんな選手生命にも関わる心身のダメージから立ち直り、「ヤグがいた頃の方が、プルシェンコらしかった」などと、詮無きことを言われ続け、それでも「勝って当たり前」の状況の中で孤高の王座を守り。体に何度もメスを入れ、一度は諦めかけたオリンピックの金メダルを淡々と手に入れた。そしてモラトリアムで一部ファンの心を萎えさせて(笑)、今再び、とんでもなく大きなリスクを取ろうとしている。

それこそヤグの自伝に負けないぐらい波瀾万丈、ドラマチックだ。十ウン歳も年下だけど、私はそんなジェーニャを、心の底から尊敬しているよ。

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コメント

ファンを10年もやっていながら、彼の生い立ちやエピソードなどあまり知らなかったので、
最近、ネットなどで詳細を知るにあたり、驚いたり感銘を受けているこのごろです。

饒舌なようでいて、実は寡黙な人。もしくは、心許せる人にしか真実を話さない人なのだと思いました。

知れば知るほど?な、それでいて魅力的な人です。
ジェーニャは。

ぷる子様
ご来店&コメントありがとうございます!
そうですよね…。私もジェーニャが気になりだした最初の頃は、クールな変態キノコ王子にしか見えませんでした(笑)。
あれほどのハイレベルな競技者であれば誰しも、常人とはかけ離れたエピソードを持っているとは思いますが、とりわけジェーニャの苦労人っぷりは、ルックスや雰囲気とかなりギャップがありますもんね。
子どもの頃、ひとりで全てを飲み込まなければいけない時期を経験をしたせいか、すごく硬い仮面を被っている思うこともあります。インタビューでも、過去のキツイ出来事の核心に触れる場面になると、さらっと流してみたり。一方で、お馬鹿な発言や、アホの子な記事もけっこうあるけど(笑)
 噛めば噛むほど味が出る、本当に面白い人。だからこそぷる子さんと同じように、私もここまでハマッてしまったんだと思っています。(o^-^o)

重いですよね、あの本。
きっと お家でこっそりにんまりして読む用の本なんでしょう。

キスクラでジェーニャから去るミーシン先生、きっとアリョーシャが長野以来 繰り返し脳裏に描いた願望だったのではないでしょうか。
切ないです。

ソルトレイクのあのシーズン 私はジェーニャが五輪で負けることなど想像だにしていませんでした。
世間の大方の見方もそうだったように思います。
アリョーシャは素晴らしい選手だし本来ならオリンピックで金メダルを取れるのだろうけれど 可哀相にジェーニャと同じ時期に生まれたのが不幸だったよね、等と友人にメールしたことを覚えています。
その一方 ときどき全てに倦んだような眼差しで空を見つめるジェーニャに これほどまでのものをこの若さで勝ち得てしまったこの人はオリンピックの後の人生をどうやって生きていくんだろう、と勝手に心配したりしていました。

ソルトレイクの銀メダルはそのあとの多くのものを私たちに与えてくれた、と思います。

「ヤグがいたころのほうがプルらしかった」
そうかもしれません。
でも それは アリョーシャがいなくなったからだけでなく 長い間 クワドを降り続け、ビールマンスピンやドーナツスピンをやりつづけた身体が試合のたびに失っていくものがあまりにも大きかったからだと思います。

そのジェーニャが再びバンクーバーで勝ち得た(あえて勝ち得たと言いたいです)銀メダル。
今度は何を彼に そして私たちにもたらしてくれるのでしょう。

もうこれ以上 傷つく彼を見たくない、というのが本音です。
でも 見ないではいられない。
業平ではないけれど
「世の中に たえてジェーニャのなかりせば 春の心はのどかけらまし」
です。


>>effect様
…「にんまり」でなく、かなりドライに対峙してしまった私は、思いっきり鞄に詰め込んで、電車で読んでしまいました(笑)。誓ってヤグが嫌いではなく、むしろとても好きです。しかしながら、あの本からは、企画者・編者の惚れ具合がビンビン伝わってきて、赤面しちゃったというか何というか。まあ、正直言うとうらやましいんですが。これからジェーニャのああいう本、もう出ないよなあ。
ところで、おっしゃる通りだと思います。ソルトレイクでジェーニャが金を獲っていたら、たぶんとっくに競技から引退していたのではと私も思います。そうなると、私もジェーニャと出会えなかったわけで。ああヒドイな、ファンって身勝手で。
身勝手ついでに、不世出の天才のキャリアを、もう少し見守っていたい。彼の気の済むまでの条件付きですが。…ジェーニャは、毎回「これが最後」とばかりに咲き乱れる桜のようですね。しかしロシアの桜は、しぶとい(笑)

本当にうらやましいですよね。
ジェーニャのあんな本が欲しい。
電車の中じゃなくて おうちでこっそり読むから(笑)
いままでの映像のDVDも欲しいのです。
ジェーニャに惚れてる人はこんなに一杯いるんだから 誰か企画してくださらないかしら!

ところで 母びさんちでショーの映像拝見してきました。 
あまりコンディションが良くなさそうに見えて凹んでます。

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